樹脂ペディア
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強力接着剤として利用されることが多いが、硬化剤などの組み合わせで物性が多様に変化するので、エンジニアリングプラスチックとしても利用されている。熱硬化性樹脂の一種。
寸法精度の高さや、耐水性・耐薬品性・電気特性にすぐれていることから、電子回路の基板などにも汎用されている樹脂である。
【比重】 1.11~1.40
【特長】
【活用例】
エポキシ樹脂は、未端に反応性のエポキシ基を持つ分子量が数百から1万程度のオリゴマーです。用途に応じた各種の硬化剤と組合せ、硬化することで様々な特性を持つ硬化樹脂を得ることができます。接着剤、塗料、積層品、注型品、成形品などとして化学、電気、機械、土木工業の分野で果たしている役割は非常に重要なものです。
この樹脂は、戦後石油化学工業の発展に伴い、原料のエピクロルヒドリンやビスフェノールAが安価に供給されるようになって初めて、スイスのCiba社やアメリカのShell社などで工業化されました。初期にはほとんど接着剤や塗料として用いられましたが、その後硬化剤の研究が進歩し、現在のような広範な用途が開拓されました。
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合生成物は、最初に開発され、現在でもエポキシ樹脂生産量の約7割近くを占めています。一般にビスフェノールA型(ビスA型)エポキシ樹脂と呼ばれています。原料のビスフェノールAはフェノールとアセトンから、また、エピクロルヒドリンはプロピレンから合成されます。
エポキシ樹脂は硬化剤と反応して、機械的強度や耐薬品性の優れたものになります。ただし、その性質は、硬化剤の種類や配合比、あるいは硬化条件などによって大きく変わってきます。硬化剤は、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系およびその他の硬化剤に分類され、それぞれ用途に応じて適切に選択使用されます。
脂肪族ポリアミン、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどは常温硬化剤として実用されます。しかしながら、これらは毒性が強く、皮膚炎や呼吸器障害の原因となるため、他の化合物、例えばエポキシ樹脂、アクリロニトリル、酸化エチレンなどを付加させて末端にアミノ基を持つ付加化合物として使用することも多いです。これら付加物は毒性及び揮発性が低く、また、樹脂に対して同量配合すればよいように取扱いやすい状態にして市販されています。これらを一般に変性アミンと総称しています。これら変性アミンは、その変性方法により硬化樹脂の物性がかなり異なってくるため、要求性能に合わせて選択することが重要です。
酸無水物系硬化剤としては、安価なためよく用いられる無水フタル酸、融点が低く取扱いの容易なテトラおよびヘキサヒドロ無水フタル酸、液状で物性のバランスがとれ比較的安価なメチルテトラヒドロ無水フタル酸、ポットライフの長い液状の無水メチルナジック酸、高温特性の良い無水ピロメリット酸、難燃性の無水ヘット酸、柔軟性を付与するドデセニル無水コハク酸などが主要なものです。
ダイマー酸は、主成分がリノール酸やオレイン酸である不飽和脂肪酸を加熱重合して製造され、これにジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンなどを反応させると、軟化点の低い粘稠な液状ポリアミド樹脂となります。このポリアミド樹脂は、塗料、土木・建築、接着剤用の硬化剤として有用であり、アミン系硬化剤の需要量を上回っています。また、アミンの種類や配合比を変更することにより、分子量、粘度、反応性などを幅広く変化させることができます。
イミダゾール類は、第三アミンと同様にアニキン重合型硬化剤であり、他の硬化剤の硬化促進剤としても用いられています。その特徴は、比較的長い可使時間を持ち、作業性を改善するために各種誘導体を作ることができることです。主に、積層板や塗料、接着剤用途に使われています。
フェノール樹脂は、多官能型硬化剤として有用であり、耐熱性の高い硬化物を与え、半導体封止用成形料に用いられています。アミノ樹脂は主に塗料用途としてエポキシ樹脂の性質を改良したり、価格を下げるために用いられてきましたが、最近では難燃性の付与が注目され、電気用材料としても利用されています。そのほか、特殊硬化剤として、潜伏性に優れたジシアンジアミド、低温速硬化性のポリメルカプタンなどがあり、主に塗料、接着剤などに利用されています。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は汎用タイプとして広く用いられており、その特性はエポキシ樹脂全体に共通するものです。エポキシ樹脂の硬化は、エポキシ基の開環とそれに伴う付加反応によって進行します。従って硬化の際、水その他の揮発物を副生せず、体積収縮が少ないという特徴があります。このため、電気絶縁性や寸法変定性が良く、注型品や成形品として電気関係や機機関係の用途に用いられています。また、他物質への接着性に優れており、接着剤や塗料、あるいはガラス繊維との積層用材料として広く応用されています。
クレゾールノボラックタイプとフェノールノボラックタイプの2種類がありますが、どちらも官能基数が多く、耐熱性、耐薬品性、電気特性に優れた硬化物を与えます。粉体塗料、成形材料、積層板などに使用され、特に半導体封止材料用需要が大きいです。
分子中に芳香環を含まないため、耐候性、耐アーク性および耐トラッキング性に優れています。主として電気絶緑材料として使用されます。高温特性も優秀ですが、固くて脆い性質があり、ガラス繊維などの強化材とともに使用されます。アミンとの反応性は悪いですが、酸無水物とは容易に反応するため、硬化剤としては主に酸無水物を使用します。また、低粘度であるため希釈剤としても有効です。
可撓性に優れ、低粘度であるので主に希釈剤として用いられます。モノあるいはジエポキシタイプのものが中心です。耐熱性は劣ります。
カルボン酸とエピクロルヒドリンの反応によって得られる物質で、一般的にはジカルボン酸のようなフタル酸を用いたジグリシジルエステルタイプが用いられます。このタイプの反応性はグリシジルエーテル型のものよりも高く、一般的には酸無水物系の硬化剤が使用されます。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と比較して、低粘度であり、硬化物の耐アーク性、耐トラッキング性、耐候性に優れているため、電気絶縁材料として広く用いられています。
この物質はアミンをグリシジル化して作られるエポキシ樹脂で、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンやトリグリシジル-p-アミノフェノールのような多官能型のものがよく知られています。この物質は分子量が小さく、多官能性を持っているため、硬化物の耐熱性が優れています。このため、この物質は耐熱性複合材料用マトリックス樹脂として重要な役割を果たしています。
臭素化ビスフェノールAを原料とした難燃性エポキシ樹脂、耐熱性、耐候性、耐アーク性に優れたヒダントイン系エポキシ樹脂、耐熱性に優れたイソシアヌレート系エポキシ樹脂などがあります。特に難燃性エポキシ樹脂は、UL規格の強化とともにその需要が増加しています。
エポキシ樹脂の用途には、塗料や接着剤、あるいは道路舗装など、いわゆる成形加工を要しないものが多くありますが、注型品、積層品、成形製品なども作られていますので、重要なものについて説明します。
エポキシ樹脂の注型は、治工具の製作や電気部品の埋め込みなどに利用されます。後者では、絶縁のほかに破損や劣化防止、あるいは組み立て作業を容易にするなどの利点があり、ポッティング、エンキャプシュレーション、シーリングのいずれもが利用されます。その中でも、特筆すべき注型技術としてCiba – Geigy社によって開発された加圧ゲル化注型法があります。これは、硬化剤を配合した注型用材料を真空脱泡した後、高温金型に圧入し、硬化させるものです。この方法の利点としては、生産速度の向上、硬化過程が均一であるため寸法精度が良好などが挙げられます。
エポキシ樹脂/ガラス繊維積層材料は優秀な性質を持っているため、強化プラスチックの分野の中でも重要な地位を占めています。また、強化材として炭素繊維なども使用され、それぞれ優れた性能を発揮しています。この積層品は湿式法、乾式法、およびフィラメントワインディング法によって作られます。
この方法は液状樹脂に硬化剤を混合し、希釈剤を加えるか加温して粘度を下げ、ポリエステルの場合と同様な操作で積層成形する方法です。希釈剤には低粘度のジグリシジルエーテル型化合物または脂環式エポキシ樹脂のような反応性希釈剤を使用すると、積層品の機械的性質が低下しません。
固状樹脂を溶剤としてアセトンなどに溶かし、反応しない硬化剤であるジシアンジアミドを加え、ガラス繊維に含浸させて乾燥させます。その後、得られたプリブレグを重ねて加熱加圧成形すると、積層製品が得られます。
樹脂含浸ガラス繊維を芯型に巻き付け、加熱硬化させる方法は、ロケットやミサイル、タンク、パイプなどに応用されています。この製品の主な特徴は、耐薬品性が優秀で比重に対しての強度が高いことです。また、繊維の巻き方、すなわち糸の交差する角度を目的に応じて変えることができ、円周方向と軸方向との強度比を自由に調整できるのもこの方法の利点です。パイプに巻き上げたものを切り開いてシート状製品を作ることもでき、用途は広いです。
粉末状エポキシ樹脂成形材料は、フェノール樹脂やユリア樹脂と同様に市販されており、圧縮成形およびトランスファ成形で効率的に成形品を製造することができます。また、最近では射出成形用材料も販売されています。
一般的に、エポキシ樹脂成形材料は、ビスフェノールAあるいはノボラックのグリシジルエーテル型樹脂をベースにしており、これに若香族アミン硬化剤、フェノール樹脂硬化剤あるいは酸無水物硬化剤、および充填材を配合し、ある程度反応を進めて適切な成形性を与えたものです。
最近の傾向として、電気・電子用の伸びが著しいことが特徴です。
エポキシ樹脂は、電気特性や機械的特性に優れ、注型加工も容易であるため、重電機器に応用されています。注型用エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型が使用され、硬化剤としては、電気性能の点から酸無水物が用いられます。一般的に、これらの樹脂混合物には多量のシリカなどの充填剤が加えられ、耐クラック性や耐トラッキング性の向上が図られています。主な製品としては、変圧器、絶縁体、ブッシング、絶縁開閉機器などが挙げられます。
エポキシ樹脂は、電気的性質、機機的性質、耐水・耐薬品性、耐熱性に優れており、ガラス布、ガラス繊維、炭素繊維などの基材と組み合わせて積層品として用いられています。積層品の用途としては、構造用、重電機器用のほかに印刷回路用があり、現在、最も需要が大きくなっています。印刷回路用としては、ガラス布基材の銅張積層板が中心であり、産業用電子機器の汎用化に伴い、需要が急増し、しかも高密度化などの要求が年々高まっています。
これはエポキシ樹脂成形材料から圧縮成形やトランスファ成形によって作られるもので、寸法安定性や電気的性能に優れているため、主にインサートの多い電気部品や寸法精度の要求が高い機械部品に使用されています。
特に最近では、エレクトロニクス産業の発展に伴い、半導体などの電子部品のトランスファ封止成形が一般化し、各種の成形品が作られるようになりました。
エポキシ樹脂塗料は、金属をはじめ各種材質に対する密着性が非常に良く、塗膜は強靭で耐水性、耐薬品性に優れているため、薬品貯蔵タンクやドラム缶の内面塗装、各種配管や化学装置の保護塗装あるいは電線の絶縁エナメルなどに利用されています。もちろん、下塗り塗装としても極めて重要です。用途としては、缶用、自動車用、船舶・重防食用、一般用に分類できます。近年になって省資源、脱公害の観点から、無溶剤塗料、ハイソリッド型塗料、粉体塗料、水系エマルション塗料などについて技術開発が進められ、実用化されています。
粉体塗料は、浴剤を含まない粉末状の塗料で、静電塗料方式では、空気中で霧状となった塗料が静電気で被塗物に塗着し、加熱溶融により成膜されます。主要なエポキシ樹脂としては、軟化点の高いビスフェノールA型エポキシ樹脂が使用され、硬化剤としてはジシアンジアミド、芳香族アミン、イミダゾール、酸無水物が使われます。
主な用途は、鋼管、建材、自動車下塗りなどであり、塗装自動化が容易で、無溶剤であり、塗料が回収・再使用でき、厚く塗れるなどの特徴があります。
エポキシ樹脂を界面活性剤で強制乳化し、硬化剤を加えて水系塗料としています。エポキシ樹脂には通常のビスフェノールA型が使用され、硬化剤としては、強制乳化したポリアミドや自己乳化型のポリアミド、ポリアミンが使用されています。
自動車の車体の電着塗装に用いられています。電着塗装とは、比較的低濃度の水性塗料中に、電導体である被塗物を陽極または陰極とし、この被塗物と対極の間に直流電流を流すと、塗料粒子が被塗物上に凝固析出して塗膜となる塗装方法です。塗料をカチオン化し、被塗物を陰極とした場合がカチオン電着塗料です。特徴としては、自動塗装が容易、電気抵抗のない未塗装の部分に塗装が広がり陰の部分まで塗装が可能、膜厚の均一化、水性塗料であり環境汚染が少ない、などが挙げられます。
鋼材の防食を目的としたエポキシ樹脂・ポリアミド系の下塗り塗料で、亜鉛の微粉末を90重量%以上含んでいるので電気化学的な防食効果が大きい特徴があります。この塗料を塗布した調材はそのまま溶接でき、造船所での需要が多くあります。
ケイ素樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを除けばなんでも接着できます。例えば金属、ガラス、陶磁器、石材など、他の接着剤では十分な強度が得られないような材質をもよく接着します。特に軽金属に対しては大きな接着力があり、リベットによる接合よりも大きな強度を得ることができます。エポキシ樹脂接着剤は液状、ペースト状、粉末状、などいろいろなタイプが市販されていますが、液状のものが最も広く用いられています。
主な需要先は航空機工業、建設工業および電気工業です。軽金属製窓枠やドアの接着、プリント配線用積層板と銅箔との接着、耐水性研磨紙への砥粒の接着などは、この樹脂の特徴をうまく利用した用途例です。
また、土木・建築方面への応用として、プレハブコンクリートブロックの現場接着、きれいな小砂利や砕石の接着による建造物の外面装飾なども増加しています。
土木・建築用途としては、コンクリート建造物の補修、道路舗装、建築物の床材などがあります。
コンクリート構造物の補修方法としては、ひび割れにエポキシ樹脂を注入したり、鋼板をエポキシ樹脂により接着したり、欠落部をエポキシ樹脂コンクリートで補修するなどがあります。いずれもエポキシ樹脂の接着性の良さを生かしています。
道路舗装の場合、エポキシ樹脂に摩擦係数の大きい砂や石粉、顔料などを加え、使用直前に硬化剤を加えて路面に施工します。道床との接着力が良いので薄い層の施工で十分目的を達することができ、橋や高速道路に適用されています。利点は、路面とタイヤとの摩擦が大きいので車がスリップしないこと、摩耗しにくく長期の使用に耐えること、施工が簡単で損傷箇所の補修が容易なこと、耐油性が良好でガソリンスタンド付近の舗装に特に適していることなどです。
建築物の床材の場合には、液状樹脂と硬化剤及び充填材を使用直前に混合して直接床上にコテ塗りするものと、砂を充填したタイル状の硬化樹脂を接着剤で床張りするものとがあります。いずれも耐油・耐薬品性が優秀で、摩耗にもよく耐え、清潔に保ちやすいので化学工場や搾乳所、食品加工場、病院の手術室などに応用されています。
繊維強化エポキシ樹脂複合材料は、構造用材料として使用されています。ガラス繊維を強化材とする複合材料は、燃料タンク、パイプ、貯蔵槽、耐圧容器などに用途があります。炭素繊維を強化材とする複合材料は先進複合材料に属しており、自動車や航空機の構造材料、ゴルフクラブシャフト、釣竿などのスポーツ用品分野に使用されています。